「10年に1度の大豊作」と言われた、2014年のNBAドラフト。精鋭ぞろいのルーキーたちがしのぎを削った今シーズン、ルーキー・オブ・ザ・イヤー(新人王)を獲得するのは、いったい誰なのか――。

 昨年のドラフトで栄光の全体1位指名を受けたのは、1年生ながらカンザス大のエースとして君臨した、カナダ出身のアンドリュー・ウィギンス(ミネソタ・ティンバーウルブズ/SF/20歳)だ。ウィギンスは、高校時代から「カナダのマイケル・ジョーダン」と呼ばれた逸材。203センチの身長と、211センチのウィングスパン(両腕を左右に広げた長さ)、そして垂直跳び112センチという驚異の身体能力を誇り、「将来性込みの全体1位」というのが関係者の評価だった。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 一方、完成度の高さから「即戦力」という評価を受けて2位指名となったのが、ジャバリ・パーカー(ミルウォーキー・バックス/SF/20歳)だ。パーカーは、シカゴ・ブルズのデリック・ローズ(PG)を輩出したシメオン高校、そして今年のNCAAトーナメントを制したデューク大の出身。多彩なスキルを持ち、グラント・ヒル(1994年〜2013年/元デトロイト・ピストンズなど)やポール・ピアース(ワシントン・ウィザーズ/SF)のようなオールラウンダーと評されることが多い。

 ポテンシャルのウィギンス、即戦力のパーカー。このふたりのうち、どちらかが今季のルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝くだろうと囁(ささや)かれ、シーズン開幕前には『NBA.com』が30人のGMを対象に行なったアンケートで、「今季の新人王は誰か?」という問いに対し、75%のGMがパーカーを指名し、ウィギンスは17.9%にとどまった。

 そしてシーズンが開幕すると、前評判どおりパーカーは即戦力として安定した活躍を見せる。25試合で平均12.3得点(ルーキー2位)、5.5リバウンド(同4位)をマーク。昨季15勝67敗だったバックスを牽引し、13勝12敗の好スタートを切ることに大きく貢献した。

 そして11月には、イースタン・ルーキー・オブ・ザ・マンス(月間最優秀新人賞)を獲得。新人王レースで大きくリードしたかに思えた。しかし12月15日、フェニックス・サンズ戦で左ひざの前十字じん帯を断裂し、残りシーズンの全休が決定することに......。過去に多くのプレイヤーから輝きを奪った故障箇所だけに、来季以降にも暗雲が立ちこめてしまった。

 対するウィギンスはシーズン開幕からスターターに定着し、4月13日現在、出場した81試合すべてに先発。昨年12月終盤からはスタッツを急上昇させ、平均16.8得点(ルーキー1位)、4.5リバウンド(同8位)の成績を残している。さらにウィギンスは、NBAオールスターウイークエンドに開催されたライジング・スターズ・チャレンジ(※)で22得点を記録してMVPを獲得。11月から2月まで4カ月連続で、ウェスタン・ルーキー・オブ・ザ・マンスにも選出されている。パーカーが離脱した今、新人王に最も近いのがウィギンスであることは間違いない。

※ライジング・スターズ・チャレンジ=NBA1年目の選手と2年目の選手で構成されたチームの間で行なわれる対抗戦。

 もちろん、今シーズンの新人王はウィギンスで確定というわけではない。「10年に1度の大豊作」と言われているだけに、対抗馬も多数存在する。まず筆頭は、12月と3月のイースタン・ルーキー・オブ・ザ・マンスを獲得したシカゴ・ブルズのニコラ・ミロティッチ(PF)だ。モンテネグロ出身の24歳で、2011年のドラフトで23位指名を受けていたが、所属するレアル・マドリード・バロンセスト(スペイン)との間に契約が残っていたため、NBAデビューは今シーズンになった。パワーフォワードながらアウトサイドシュートを得意とし、トニー・クーコッチ(1993年〜2006年/元ブルズなど)を彷彿とさせる。

 ミロティッチはシーズン序盤こそ出場機会に恵まれなかったものの、デリック・ローズ(PG)やジミー・バトラー(SG)といったチームの主力が相次いで故障すると、出場時間が急増。同時にスタッツも急上昇させ、3月は平均20.8得点、7.6リバウンドを記録している。今季通算では平均10.1得点(ルーキー5位)、4.9リバウンド(同7位)とインパクトに欠けるものの、3月以降の活躍度ならば新人王の資格は十分だ。

 また、2014年ドラフト10位指名のエルフリッド・ペイトン(オーランド・マジック/PG/21歳)も侮れない存在。痩身のポイントガードながらリバウンドに強く、ディフェンスもうまい。3月18日のダラス・マーベリックス戦、3月20日のポートランド・トレイルブレイザーズ戦と、2試合連続でトリプルダブルを達成している。ルーキーで2試合連続のトリプルダブルを記録したのは、1997年のアントワン・ウォーカー(1996年〜2009年/元ボストン・セルティックスなど)以来の快挙だ。現在の成績は、平均9.0得点(ルーキー9位)、6.5アシスト(同1位)、4.3リバウンド(同11位)、1.7スティール(同2位)と、いかんなくオールラウンダーぶりを発揮している。

 さらに、オールスターでダンク王に輝いた13位指名のザック・ラビーン(ミネソタ・ティンバーウルブズ/PG/20歳)は、4月11日のゴールデンステート・ウォリアーズ戦で今季ルーキー最多となる37得点を記録。また、2月のウェスタン・ルーキー・オブ・ザ・マンスに選出された6位指名のマーカス・スマート(ボストン・セルティックス/PG/21歳)も、才能あふれる選手だ。ポイントガードでありながら193センチ・99.8 キロの体躯を誇るスマートについて、高校時代に対戦経験のある富樫勇樹(Dリーグ/テキサス・レジェンズ/PG)は「化け物だった」と語っている。

 一方、2014年ドラフト組ではないが、ナーレンズ・ノエル(フィラデルフィア・76ers/C/21歳)にも注目したい。2013年のドラフト6位で76ersに入団するものの、ケガのために全休。実質、今季がルーキーシーズンとなり、新人王の資格を有す。211センチのセンターながら、俊敏な動きでゴール下を支配。平均8.1リバウンド(ルーキー1位)、9.9得点(同7位)、1.9ブロック(同1位)の成績を残している。

『ルーキー・オブ・ザ・イヤー』

 レブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャバリアーズ/SF)や、ケビン・デュラント(オクラホマシティ・サンダー/SF)のように、その後NBAの歴史に名を残す選手が受賞する一方、初年度がキャリア最高の輝きだった選手が手にしたりもする、魅惑のアワード――。今シーズン、誰が新人王に輝こうとも、その選手のキャリアが前者たちのように輝くことを切に願いたい。

※数字は現地4月13日現在。

水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro