この視点でものを見る癖がつかないと、1ステージ制を2ステージ制に変えたところで、Jリーグの娯楽性は飛躍しない。なによりサッカー競技そのものが面白く見えてこない。

 Jリーグの視聴率は5%にも届かないと言われるが、その一方で、日本代表の視聴率は20〜30%にも達する。日本のサッカー界を支えているのは日本代表であることが、この数字から一目瞭然になる。

 そうなる理由は簡単だ。日本代表が面白いサッカーをしているから、ではない。この場合は、日本国民全員が当事者だからだ。面白くても、つまらなくても熱狂する。日本人の多くが、等々力を埋めた川崎ファン、浦和ファンのような気持ちで、日本代表に接しているからだ。

 当事者という立場でしか盛り上がれない。関心を抱けない。サッカーに限らず日本の場合は、スポーツ界全体にその傾向が強いと思う。それはあっていいことなのだろうけれど、それが強すぎると、サッカーの魅力、それぞれのスポーツの魅力は浮き彫りにならない。思いのほか、その普及発展に貢献しない。

 サッカーはそれでもまだ、いい方だと思う。W杯でも外国同士の試合を見る人は少なくない。チャンピオンズリーグもしかり。日本人がそこに存在しない試合でも、画面に目を凝らす人は少なくない。サッカーそのものを楽しもうとする人、競技性について関心を抱く人の数は、他の競技に比べて断然多い。

 それは、よいものに対して、的確に反応できる人と言ってもいい。サッカーという競技の魅力の証明だとも言えるが、つまり日本にも、ある意味で理想的な社会が、存在しているわけだ。

 よいサッカーをすれば、よい! と言ってくれる人がいるわけだ。Jリーグはそうした層に、もう少しキチンと向き合う必要があると思う。彼らを唸らせるようなよいプレイ、よい試合を目指すべきなのだ。これこそが、地方区のクラブを全国区に引き上げる最善の方法でもある。

 遠くを見よ。少し離れたところで見ているサッカーファンの目を気にすべし。Jリーグの各監督及びクラブ関係者には、特にそう言いたい。ついでに言えば、日本代表監督にも同じ言葉を贈りたい。当事者である日本人の目だけを意識するな、と。勝利のみならず、いいサッカーをすることを同時に追求すべし。世界は広い。サッカーファンは何億といる。よいものに対して、よい! と言ってくれる人の数も圧倒的に多い。

 サッカーは、スタンドにやってきた当事者だけが満足すればいいと言うものではないのだ。遠くで見ている人を振り向かせてなんぼ。川崎対浦和戦を見ながら、僕は改めてそう思うのだった。