浦和レッズと川崎フロンターレ。この2チームのいずれかが、優勝する可能性は5割ぐらいあるのではないだろうか。4月12日、等々力競技場で行われたその両チームの直接対決は、Jリーグ指折りの好カードと言えた。

 試合は川崎が先行し、浦和が終了間際に追いつく展開。ホームの川崎にとっては、まさに勝ち損ね。悔しい試合だったが、内容的には優勢だったので、スタンドを埋めた川崎ファンは、概ね満足げな様子だった。浦和ファンの反応も似たような感じだった。アウェイ戦で、終了間際に同点に追いつく試合展開に、安堵の表情を浮かべていた。

 お互いにとって、内容的にも結果的にも悪くない試合。一言でいえば、そんな感じだ。試合後、会見に臨んだペトロビッチ、風間両監督も悪くない試合と捉えているようで、ともに機嫌は上々だった。

 こちらとの間に、温度差があることを感じずにはいられなかった。

 僕の立場は、川崎ファンでも浦和ファンでもない中立だ。近年の戦いを見る限り、川崎の方が好みに合ったサッカーだとは思うが、だからといって、川崎の勝利を願ってスタジアムに足を運んだわけではない。面白いサッカー、少しでも高級な、Jリーグ屈指の好カードに相応しいサッカーが見たいとの思いが、一番の動機だった。お腹を空かしてスタジアムに出かけたつもりだった。

 極上のディナーを望んでいたわけではない。が、800円とか900円で食べているいつもの定食とはひと味違う、ちょっと上等なものにはありつきたかったし、ありつけるだろうと思っていた。

 両監督が、料理人だとすれば、いったいどれほどの料理を振る舞ったつもりだったのだろうか。会見の様子を見る限り、悪びれた様子はなかった。むしろ胸を張っているようだった。日頃から両チームを盲目的に応援している“当事者”はともかく、そうではない第3者には、提供した料理の味がどうだったのかと、不安げに思うような素振りは、全くと言っていいほど見られなかった。

 スペシャル感ゼロ。限られた選択肢の中から出かけるいつもの定食屋の味そのものだった。これが優勝候補同士の対戦だとすれば、Jリーグそのものの味も、近所の定食屋の味と変わらないことになる。

 相手にボールを奪われれば、たちまち5人のディフェンダーが最終ラインにサッと並ぶサッカー。守備的サッカーだ! と決めつけるつもりはないけれど、世界の流れに、決して順行しているとは言い難いリスクを恐れたサッカーに、こちらの胸は踊らなかった。将棋で言えば、後方に位置する対局当初の並びに戻ってしまうようなサッカーに、非日常的な興奮を掻き立てられることはなかった。失敗を恐れることが日本人の気質だとすれば、この試合は、まさに日本人の気質に支配されたサッカーと言えた。

 Jリーグの問題は、それぞれの試合が、当事者間の関係に終始することにある。両チームのファンには満足できても、それ以外の人が満足できない試合が多いことにある。この日、等々力を訪れた観衆は約25000人。改装なった観客席の定員は27000人強なので、試合はほぼ満杯の中で行われた。「赤勝て、青勝て」で、大いに盛り上がっていた。

 この試合に限った話ではない。各スタジアムは、第3者であるこちらの予想以上に盛り上がっている。2ステージ制に変更する必要など全くないように見える。しかし一方で、テレビの視聴率は限りなく低い。楽しんでいるのは当事者のみ。第3者にJリーグが、鑑賞物として面白く映っていない、これは何よりの証拠だ。

 そこのところをチェックする人がいない点も問題だ。面白かったか、つまらなかったか。勝ち負け以外について、積極的に口にする人がいないことも、Jリーグの問題だと思う。その役を担うのはメディアになるのだが、その大抵は当事者目線で語ろうとする。サッカー会全体の普及発展を願う気持ちに欠けている、僕にはそう見える。