悔しい5位だった。

「僕の夢(目標)は、マスターズに勝つことですから。それが大き過ぎるほどありますから......。確かに、5位に入れたし、最終日は『66』(のスコア)で追い上げられました。それはうれしいですけど......でも、やっぱり悔しい」

 ラウンド後、松山英樹(23歳)は、そう本音を漏らした。

 ジョージア州オーガスタ(パー72)で開催された今季米ツアーのメジャー第1弾、マスターズ(4月9日〜12日)。日本期待の松山は、最終日に6つスコアを伸ばして躍進するも、通算11アンダー、単独5位に終わった。

 過去のマスターズで日本人選手の活躍と言えば、伊澤利光(2001年)や片山晋呉(2009年)の4位がある。ともに10アンダーでの成績だ。松山の順位は5位だったものの、11アンダーと日本人選手最少スコアを記録した。

 正直言って、伊澤や片山のゲーム内容や状況を見たとき、4位とはいえ、ある種の限界を感じた。片山本人も、「(マスターズで)あれだけ最高のゴルフをして、2打差の4位。もう、それ以上は考えられない」と語ったことがある。つまり、マスターズ4位というのは、年齢的なもの、体力的なもの、肉体的なものなど、あらゆることを含めて、片山にしろ、伊澤にしろ、おそらく人生の中で最高のパフォーマンスを発揮しての結果だと思う。

 一方で、今回の松山は違った。ゲーム内容を見ると、まだまだポテンシャルがあるなと感じた。

「もう少しパッティングが決まってくれたら......」

 悔しさばかりを募らせる松山の姿を見る度に、余計にそう思った。

 苦しんできたパットがようやく入り出したのは、最終日だった。8番(パー5)でこの日最初のバーディーを決めたあと、10番(パー4)、11番(パー4)で連続バーディー。さらに、13番(パー5)でイーグルを奪うと、最終18番(パー4)でもバーディーを奪って締めくくった。

 その瞬間、松山は「こういうゴルフがしたかった」と、言いたげな表情を見せた。この先、松山にはまだまだ希望が持てる。

 手首のケガがあったにせよ、昨年のマスターズでは予選落ちを喫した松山。その後も米ツアーで戦い続け、5月のメモリアルトーナメント(5月29日〜6月1日/オハイオ州)で初優勝を飾った。松山が変わったのは、そこからかもしれない。

 自分の肉体を限界まで追い込んで、さらに追い込むためにトレーニングを消化。そのつらさは、他人には理解できない。けれども、それをやり通した。

「夢や目標がしっかりとあって、それに向かってまい進しているときの努力や精進は、実はつらくないんだよね。だって、目標があるからこそ、やっているんだからね」

 そう、僕が松山に話をしたのは、昨年暮れのことだった。対して松山は、「わかっています」と、目を輝かせてきっぱりと答えた。

 そして今年、その言葉どおりの活躍を松山は見せた。

 マスターズにおいて、あくまでも優勝を目標にして初日を迎えるのは、実は容易(たやす)いことではない。さまざまな思いが去来するし、それら雑念を振り払うことがまた、極めて難しいからだ。

 そうした中、松山はいいスタートを切った。最後の17番、18番でボギーがあったにせよ、初日1アンダーというのは、まずまずの成績である。チャンスは十分にあると思った。が、今年はちょっと様子が違ってしまった。

 ジョーダン・スピース(21歳)が、初日「64」の8アンダーというビッグスコアを記録。さらに、2日目も6つスコアを伸ばして、前半戦を終えて14アンダーと独走したからだ。そのうえ、J・スピースは3日目も崩れることなく、54ホール消化して、16アンダーとした。

 この記録的な、とんでもないスコアをJ・スピースが出すことによって、ゲームの流れは大きく変わってしまった。おかげで、松山のチャンスも遠のいた。

 それでも、今年のマスターズで松山は、背伸びして手を伸ばせば、優勝に届く位置に自分がいる、と実感した。そして、その課題も見えてきた。この1年間、ここまで少しずつ積み重ねてきた精進が、松山を支えた。

「パッティングをもっと磨けば(優勝に)届くと思います」

 マスターズで勝つための課題について、そう語った松山。技術的なレベルアップはもちろんのこと、マスターズで勝つにはあと、脇役ではなく、どうやって主役の座を奪い取るか、というアピールも必要だと思う。

 なにしろ、驚くべきことに、21歳の若者が強烈なプレッシャーに打ち勝って、最後まで走り抜けてしまったのだ。通算18アンダーと、大会タイ記録で優勝したJ・スピース。"新しい時代"がやってきそうである。

 そのJ・スピースをはじめ、フィル・ミケルソン(44歳)と並んで2位タイになったジャスティン・ローズ(34歳)、4位のロリー・マキロイ(25歳)、6位のダスティン・ションソン(30歳)らが、今後の新時代を築いていくのだろう。

 彼らに共通して言えることは、忍耐力や技量の豊富さだけでなく、強いメンタリティーを持ち合わせている、ということだと思う。

 もちろん、松山も同様である。新時代に突入した米ツアー、そしてメジャーの戦いの中に、間違いなく彼も加わっていく。そこで"主役"となって躍動する、松山の姿を早く見たい。

三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho