「内容的には全然満足していませんよ。トップとの差もあるので、明日からその差を縮められるようにがんばります」

 よほど悔しかったのだろう。松山英樹(23歳)は、口を横一文字にして語った。

 4度目のマスターズ(現時時間4月9日〜12日/ジョージア州・オーガスタ=パー72)に挑んだ松山。2日間を終えて、通算3アンダー、12位タイで予選を通過した。まずは、日本のテレビ局のインタビューを受けると、日本人記者団の囲み取材に答えた。さらには「クイック・クオーツ」といって、記者会見場ではないところで簡易的に公式コメントをとられ、最後に地元アメリカのテレビ局、数局の共同インタビューに応じた。

 日本ばかりでなく、松山は米ツアーの、それも"ウイナーズ・サークル(常に優勝圏内にいる選手たち)"のひとりとして評価されている。だからこそ、今年のマスターズの2日間のゲーム内容に、悔しさが残るのだ。

 まして、ふたつ年下で、アマチュア時代から松山を目標に戦ってきたジョーダン・スピース(21歳)が、2日間で記録的なスコアをマーク。通算14アンダーで首位に立っているのだ。それを思えば、通算3アンダーは、心情的には不満タラタラだったに違いない。

「自分の状態とゴルフの内容はベストとは言えないけれども、要所、要所でバーディーがとれたので。まあ、よかったと思います」という言葉も、自分に言い聞かせて、できる限りポジティブな空気にしようという意図が少なからず感じられた。

 運も、不運も、ゴルフゲームにはつきものである。きっと長い目で見れば、誰にでも平均の法則が成立する。それでもこの2日間、スピースは運がつきまくっていた。危うい場面でも、ボールの転がり、キックの行方に助けられた。初日から「64」「66」は、幸運に包まれた実力かもしれない。

 逆に、松山はアンラッキーな場面がいくつかあった。その典型が、初日の17番(パー4)、第2打。第1打を右にふかして、木の近くに打ってしまったものの、グリーンは狙える位置だった。ところが打ってみたら、ボールの下に木の根っこが隠れていた。グリーン左手前に曲がって、結局ボギー。さらに18番(パー4)もボギーとし、3アンダーが1アンダーに落ちた。

 そしてもうひとつ、松山にとって不運だったのは、グリーンのスピードだ。タイガー・ウッズ(39歳)も「こんなにソフトで、遅いオーガスタのグリーンは初めてだ」と言うように、例年よりも遅い。そのスピードと松山がイメージするタッチが合わない。逆にスピースにとっては、完璧に合っていた。

「例年よりグリーンのスピードはちょっと遅いかなと思いますけど、昨日よりは速くなっています」と、松山は言い訳しなかったが、実はそこに、イライラがあったはずだ。

 そんな松山にも、運が向いてきたのは、2日目の12番ホール(パー3)だった。

 第1打が、左エッジ。そこは下り坂になっていて、そのまま池に傾斜しているのだが、幸運にもボールはピタリと止まって、池ポチャを免れた。

「あと10cm左だったら、池でしたね。でも、自分は池に入るとは思っていませんでしたけど(笑)」

 運をつかんだ松山は、その3m弱の寄せを見事にチップイン。バーディーを奪った。

「あれで流れが変わったと思います」という松山はその後、13番、15番のロングホールでも着実にバーディーを奪取。17番でボギーを叩いたものの、通算3アンダーで決勝ラウンドへ駒を進めた。

『リスクと報酬』という言葉がある。限りなく冒険をして、危険を覚悟で攻めた結果、報酬(好スコア)がやってくるという意味だ。

「(この2日間を振り返っても)もう終わった結果なので。明日から2日間あるので、終わったことを後悔するより、先のことを考えたい。明日からうまくいくように、しっかりと考えてやっていきたいと思います」

 そう語る松山の脳裏には、残り2日間を『リスクと報酬』のスタンスで、上を狙っていく覚悟がある。そこで大崩れしないのが、"ウイナーズ・サークル"の選手である。世界の頂点をかけた本当の戦いが、これから始まる。

三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho